医学の進歩、わが国の高度な公衆衛生管理のおかげで生涯寿命がのびたことは喜ばしいことです。一方、このことは人口の高齢化を伴います。人口の高齢化に伴い、骨粗しょう症の患者数が年々増加しつつあり、現在は約1300万から1400万人と推定されています。骨粗しょう症は脊椎、上肢、下肢の骨折が生じやすいため、骨粗しょう症の予防および治療は重要です。
 予防及び治療は、適切な食事(ほどよくカルシウムを摂取する)、適度の運動(ほどよく体を動かす)、適度に日光に浴びる(ほどよく)に尽きます。また、女性においては閉経後に急骨量が低下します(個人差がある)ので、急速に低下している人を早期にスクリーニングして、骨量のさらなる減少を食い止める必要があります。
 スクリーニングには、骨塩定量、骨密度定量、血液検査、必要ならレントゲン検査などに基づいた総合評価が重要です。それぞれの検査の結果は年齢によって、その意味合いや解釈が異なりますので、医師に相談いただくのが重要です。
 骨粗しょう症の治療で用いられるお薬は、選択枝が増えました。患者様の年齢、性別、病状によって、どのお薬を選択するかがかわってきます。お薬は大きく分けて、以下の3群に分けられます。
 

 

 1)

骨が壊れるのを防ぐ薬
活性型ビタミンD3製剤、SERM製剤、ビスホスホネート製剤 これらは主に内服薬です。

 2)

骨をつくる薬
副甲状腺ホルモン製剤 これらは皮下注射薬です。在宅自己注射も可能です。

 3)

骨をつくりながら壊れるのを防ぐ薬
抗スクレロスチン抗体製剤 このお薬は皮下注射薬です。
 

 国内外の多くの統計より、高齢者が脊椎、大腿骨、前腕、上腕に骨折を起こすと、その方はその後に他部位の骨折を起こしやすいことがわかっています。したがって、骨折を起こしたことがあれば、骨粗しょう症の総合評価をした上で早めにお薬の治療を導入することが望ましいです。特に、2)、3)のおくすりは効果発現時期は早く、骨折部(脊椎圧迫骨折部など)の痛みも緩和する効果もあります。
 適切な食事(ほどよくカルシウムを摂取する)、適度の運動(ほどよく体を動かす)、適度に日光に浴びる(ほどよく)、必要ならお薬による治療(どのお薬を選択するかは年齢、性別、病状によって異なりますので医師に相談ください)の4本柱で骨粗しょう症の予防と、必要なら治療をしていきましょう。