関節リウマチは、関節の痛みや腫れを主な症状とする病気です。全身の慢性的な炎症をきたす病気でもあり、多彩な経過をとります。手、指、足などの小さい関節にリウマチの炎症がおきやすいことが知られています。厚生省疫学研究班の調査では日本の有病率は0.33%と報告されています。つまり、1000人に約3人という比較的頻度の高い病気です。成人以降の発症がほとんどで、男女比は約1:4です。初発症状として、これらの関節のこわばりとして出現することがあり注意が必要です。また膝関節、股関節、足関節、肘関節など大きな関節が侵されることもあり、こういう場合は歩行動作、食事動作などの日常の生活に支障をきたすことがあります。また関節外の症状として腎臓、肺、消化器にも病変(合併症)をおこすことがあります。関節リウマチであるかどうか、関節リウマチの病気の勢いの程度、その人に適した治療を判断するにはリウマチ専門医の診察がすすめられます。治療は薬物療法、リハビリテーション、手術治療が柱になります。また、過労を避けること、睡眠を十分にとること、食事に留意することが症状の安定させるのに重要です。関節リウマチに対する薬物治療は年々進歩してきており、従来の抗リウマチ薬の最適化に加えて高い効果が得られる生物学的製剤も導入できるようになりました。これらにより,今後は関節の痛み、変形や機能低下が今までよりももっと防ぐことができるようになると思われます。当クリニックでは、ひとりひとりの患者様にとって最も適した薬物治療を、患者様と一緒に考えながら進めてまいります。

 当クリニックでは、関節リウマチの患者さまが持つ多面的な問題を総合的に診療していきたいと思います。関節リウマチの患者さまの症状には、1)関節炎による関節症状 だけでなく 2)加齢による体力低下、筋力低下 3)骨萎縮 4)精神的な問題 が組み合わさっています。逆に、ひとつの項目を改善したり予防ができれば、他の項目も改善することを国立加古川病院、甲南加古川病院の勤務医として経験してまいりました。この観点に立って長い視野で、患者さんの将来のためにも適切なアドバイスをしていきたいと思います。
また、患者さんへの病状説明は診療の根本をなす大切なことと考えます。そのために、病気のこと、治療内容やその効果、副作用について出来るだけわかりやすく説明しています。財団法人甲南病院 加古川病院リウマチ膠原病センターの塩沢和子センター長をはじめとする職員とともに共著で出版した 「リウマチと上手に付き合おう」の本には、私は「下肢関節の病態と治療」の章を担当執筆しました。関節リウマチの病状説明、治療内容の説明、日常生活上の注意、利用すべき社会支援制度を説明する際にこの本を使用しています。2009年1月に発売されました。

 2016年11月に公益社団法人日本リウマチ友の会主催の医療講演会で「関節リウマチのセルフケア(自分でできるケア)とその意義」の講演をしました。生活習慣病(高血圧、高脂血症、糖尿病など)のセルフケアが盛んに提唱されているなか、関節リウマチのセルフケアについて概説し、その基本線を紹介しました。私は関節リウマチの診療の中で、一人一人の患者さんの色々なライフステージを見守ってきました。その中で関節リウマチにとっても重要なセルフケアがあり、診療の中に取り入れてきました。その内容を下記ボタンをクリックしてご一読していただけると幸いです。

  講演
     
燃焼社出版
定価(本体1,500円+税)