関節リウマチは、関節の痛みや腫れを主な症状とする病気です。全身に慢性的な炎症をきたす病気でもあり、多彩な病状と経過をとります。手、指、足趾などの小さい関節にリウマチの炎症が起きやすいことが知られています。1990年代の厚生省疫学研究班の調査では、日本での有病率は0.33%と報告されました。21世紀になり、日本人の平均寿命がのびて高齢化したこともあいまって、最近の報告では0.6〜1.0まで上昇しています(厚生科学審議会疾病対策部会 2018年)。このことはリウマチ患者の高齢化及び、高齢になってから発症するリウマチ患者の増加が反映されていると推測します。つまり、1000人に約6人から10人という比較的頻度の高い病気であり、以前(20世紀)に比較して高齢のリウマチ患者が多くみられるようになったということです。男女比は約1:4です。初発症状は関節の痛みや腫れですが、手指のこわばりとして発現することもあり注意が必要です。また膝関節、股関節、足関節、肘関節など大きな関節が罹患することもあり、こういう場合は歩行動作などの日常の生活に支障をきたすことがあります。また、関節リウマチの関節外の症状として腎臓、肺、消化器にも病変(合併症)をおこすことがあります。

 関節の痛みや腫れが生じたときに、関節リウマチかどうかを診断すること;関節リウマチの病気の勢いの程度;その人に適した治療を判断するにはリウマチ専門医による診療がすすめられます。治療は薬物治療、リハビリテーション、手術治療が柱になります。また過労を避けること、睡眠を十分にとること、適切な食事に留意することが症状を安定させるのに重要です。関節リウマチに対する薬物治療は年々進歩してきており、従来の抗リウマチ薬に加えて、高い効果が得られる生物学的製剤(主に皮下注射薬、一部は点滴静脈注射薬)とJAK阻害薬(内服薬)が導入できます。これらにより、関節の痛み、変形や機能低下を以前に比較して防ぐことができるようになりましたし、関節リウマチの症状が軽快して薬が不要になる状態(寛解)に到達できる可能性が少しづつ増えてきました。

 当クリニックでは、関節リウマチの患者さまが持つ多面的な問題を総合的に診療していきたいと思います。関節リウマチの患者さまの症状には、1)関節炎による関節症状 だけでなく、2)加齢による体力低下、筋力低下 3)骨粗しょう症による諸問題 4)心理的な問題 が組み合わさっています。4つの項目はいずれも留意してケアするべき項目です。また、1つの項目が改善したり予防ができれば、他の項目も改善することを私は勤務医時代そして開業医になってからもみてまいりました。この観点に立って広く長期的な視野で、患者さんの将来のためにも適切なアドバイスをしていきたいと思います。

 2016年11月に公益社団法人日本リウマチ友の会主催の医療講演会で 「関節リウマチのセルフケア(自分でできるケア)とその意義」の講演をしました。生活習慣病(高血圧、高脂血症、糖尿病など)のセルフケアが盛んに提唱されるなか、関節リウマチのセルフケアについて概説し、その基本線を紹介しました。私は長く関節リウマチを診療してきたなかで、一人一人の患者さまの色々なライフステージを見守ってきました。その経験の中から、1)関節リウマチの診療の基盤はプライマリケアであること;2)関節リウマチにとってセルフケア(自分でできるケア)を一人一人の患者さまに提言していく ことが重要であり、使命であると考えます。そういう主旨の講演の内容を下記ボタンをクリックして一読していただければ幸いです。
 

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